広末涼子容疑者を逮捕、なぜ「自称」が付いていたのか。警察発表やメディア報道の裏側【解説】

広末涼子容疑者逮捕の報道、なぜメディアは「自称」をつけて報じていたのでしょうか。事件取材の経験がある記者が解説します。

静岡県の病院で看護師を蹴るなどしてけがを負わせたとして、静岡県警が4月8日、俳優の広末涼子容疑者(44)を傷害容疑で現行犯逮捕したとNHKなどが報じている。

メディア各社は当初、広末容疑者の名前に「自称」をつけて報道。Xでは「自称」がトレンド入りし、「なんで自称なの?」「自称つける意味って何?」といった声が広がった。

なぜメディアは自称をつけて報じたのか。事件取材の経験がある記者が解説する。

経緯を振り返る

NHKによると、広末容疑者は8日午前0時20分頃、静岡県島田市の病院で看護師を蹴ったり、ひっかいたりしてけがを負わせた疑い。

7日午後7時前、静岡県掛川市の新東名高速で乗用車を運転中、大型トレーラーに追突する事故を起こし、一緒に車に乗っていたマネージャーと共に病院に搬送されていたという。

所属事務所も公式HPで広末容疑者が逮捕されたことを認めており、「搬送先の病院で一時的にパニック状態に陥った結果、医療関係者の方に怪我負わせてしまいました」「本人は当面の間すべての芸能活動を自粛する運びとなりました」と報告している。

この事案を受け、メディア各社は速報で、「自称広末涼子容疑者を現行犯逮捕」などと報道。X上で「マジの広末涼子?」「本人?」と驚きや戸惑いの声が広がった。

なぜ「自称」をつけて報道?

ではなぜ、メディア各社は当初、「自称」をつけて報道したのだろうか。

まず、警察が事件の発表を行う際、記者に配る報道文には、容疑者の名前や住所、年齢、職業、事案の概要などが記載される。

この情報は「容疑者がそう話しているから」という理由で記載されるものではなく、基本的に公的証明書などから「裏が取れた」ものとして扱われる。

一方、社会的に反響の大きい事件では、現行犯逮捕などの情報をつかんだメディア各社から問い合わせが警察署に相次ぐ。そのため警察は完全に裏が取れていない状態でも第一報を発表することがあり、その際に「自称」がつけられる。

今回のケースで言えば、外見が間違いなく広末容疑者で、本人が調べに認めていたとしても、第一報の発表までに免許証などで本人確認ができていなかったとみられる。

そして、メディアもその時点で、事務所など警察以外から確定的な情報を得られていなければ、「ひとまず速報は警察の発表に従って自称をつけて報じる」と判断する。

実際、広末容疑者は事故で病院に搬送された際、免許証など身分を証明するものを持っていなかったと報じられていることから、県警は第一報を発表するまでに裏どりができていなかった可能性が高い。

朝日新聞によると、広末涼子容疑者と確定的に発表されたのは第一報から約7時間後だったといい、県警はその間に身元を特定し、メディア各社もそれを受けて「広末涼子容疑者」と自称をつけずに書いたと考えられる。

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